CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第102回 アイキャンディ(株)

『女性が自立し活躍できる社会へ』

取材先 アイキャンディ株式会社(代表取締役 福森 加苗 氏)

所在地 東京都八王子市散田町3-4-19

電話 042-664-8347

URL eye-candy.co.jp/

今般、「女性活躍推進法」制定等の後押しもあり、女性が働きやすい職場づくりへの機運が益々高まっている。一方で、厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査」によると【正社員・正職員に占める女性の割合が24.9%】【女性管理職(係長以上)の割合が12.8%】と女性活躍の社会と言うには低水準な現状にある。

 

そんな中、女性社員率100%の企業が存在する。WEB制作・広告デザインを手掛けるアイキャンディ㈱(散田町)だ。マーケティングの世界では「消費における女性の購買決定率は80%程」とも言われており、市場を見据える上で女性視点は欠かせない。

 

デザインやセミナーなど多岐に渡り社会へ【効果的な女性視点】を提供する同社代表取締役の福森加苗(ふくもり かなえ)氏より、会社のこれまでの歴史を振り返りながら、女性の力を活かす企業経営の考え方と今後の展望についてお話しを伺った。

代表取締役 福森 加苗 氏

                 

精魂込めて仕事をする

福森氏は宮崎県宮崎市の出身。高校時代は器械体操部でインターハイに3年連続出場。監督から“才能は無いけど誰よりも努力する”と評価を受けたその姿勢から2年間は主将としてチームを牽引。当時自身を築き上げた根性は現在の力の源になっているという。

 

その後上京し、アイキャンディ㈱の前身会社である広告制作会社に掃除担当としてアルバイト入社。何をすればいいかを先輩社員に尋ねたところ『あなたは掃除のおばさんだから掃除でしょ』と言われた時に惨めな気持ちになった。掃除というキーワードより「おばさん」と言われたことにショックを受けた20代前半の気持ちだったという。

 

「ショックな気持ちになりながらも私なりに掃除を一生懸命やりました。しかしトイレ掃除のチェックをした社長から『手を抜いたな』とお叱りを受けました。掃除の仕方を汗びっしょりになりながら教えてくださる姿を見て、 惨めな仕事だと思った自分が惨めだったと反省する福森氏。そこから精魂込めて毎日筋肉痛になるくらい掃除に励む日々。一生懸命な姿を認めてもらい正社員になった。はじめはデザイン担当を任されたものの、デザイン経験は無く休日も出社して勉強するも会社に貢献できている実感がなかったという。

 

そんな中、経理担当職員が退職。“ここだ!”と思った福森氏は自ら手を挙げ経理担当を引き継いだ。

 

会社の数字が見えるようになり芽生えたものは【大きな危機感】だった。

 

「会社の売上は社長1人の力に大きく頼っていることがわかりました。もし社長がいなくなったら会社はどうなってしまうのか。自分達で力をつけて仕事を取らなければならないと焦りを強く感じました」。

 

福森氏は自主的に営業に行くようになる。しかし他の社員からは「あなたが営業行っても仕事は取れない」「時間の無駄」「給料泥棒になるよ」とかなりの反発が出たそう。

「悔しいですが、営業に行っても仕事が取れていないことも事実でした」。

 

営業に奔走する日々。しかし中々仕事は獲得できない。土日返上で八王子の街を片っ端から歩き営業をしていたとき、顔見知りの佐川急便ドライバーと遭遇。営業活動をしていることを伝えると後日、色々な会社を紹介してもらったという。

 

「お蔭様で仕事を獲得できるようになって、個人として会社として少しずつ力がついてきたことを実感しました。人との繋がりの大切さを改めて感じました」。

 

ひたむきに会社のことを考え動き続けた結果、部長昇進、そして2007年に代表取締役に就任された。

社員との接し方に変化

代表取締役就任のきっかけはとある主要顧客からの声だった。

「『広告企業は若い方が引っ張る方が良い。あなたが社長になるのであれば今後もお付き合いを続ける』と言われました。はじめは社長も私も驚くばかりでした。しかし、社長も思うところがあったようで、最終的に会社を私に託すことを決断されました」。

 

急遽の事業承継。手探りでの社長業は様々な苦労があったと振り返る。中でも一番の苦労はスタッフとの接し方だったそう。

 

「その頃の社内離職率は大変高かったです。社員に続けてもらうためにどうするか、どうやってスタッフと接していくべきか色々考えました」。

 

そうして始めた取り組みが「社員と一緒にランチを食べること」だった。これまでは情が移り仕事に支障をきたすことを理由に社員との距離を置いていた。しかし、今まで嫌で避けていたコミュニケーションを図るようになると思わぬ収穫があったという。

 

「会話すると色々なことがわかるようになるのです。この人が普段何をしているのか・考えているのか・悩んでいるのか。一緒にごはんを食べるようになったのを機に、社員一人ひとりのことを考えるようになりました」。

今では、1on1ミーティングで社員は2週間に1度、アルバイト・パートさんは1カ月に1度話し合う時間をつくりコミュニケーションをスケジュールに入れ、大事な時間にしている。

 

また、これら行動や考え方の変化は、福森氏のご子息の存在も大きかったという。

「息子には厳しく躾をしたつもりです。それでも親の思うようにならないことは多い。そう思ったときに、社員たちも親御さんに育てられ、社会人としていきなり外の世界に出され、わからないことだらけで不安な状態なのではないかと気づきました。私が社長として、社員たちを社会人としてしっかり育てていかなければならないのではないか。その責任感は息子を通じて持つことができました」。

 

厳しくも愛のある姿勢で社員と向き合う福森氏。何でも言い合える風通しの良い雰囲気は会社があるべき方向に進めていると手ごたえを感じている。​

 

   

“女性活躍の社会”で大切なこと

 

冒頭の通り、今般「女性活躍の社会」を国として推進している動きがある。同社はその先駆け企業として現在も率先して全国各地で「女性活躍のセミナー」を開催している。セミナーの内容は「女性と男性の働き方の違い」をはじめ女性ならではの考え方や置かれている環境について講演するという。

 

セミナーを開催することになったきっかけは金融機関からの声。「アイキャンディさんは何故これほどに明るく対応が素敵なのでしょうか。ぜひ、うちの銀行にもレクチャーしてくれないか」とお声がかかったこと。
その後2011年の東日本大震災が発生し紙媒体広告は自粛する状況に。売上が半分以下になり悩んでいたとき、セミナー開催を商品化として全面に売り出しはじめることとした。

 

しかし、当初の反響は予想に反したものであったと当時を振り返る。

「とにかく女性活躍への関心が薄かったです。はじめに開催したとある団体へのセミナーでは、参加者が『女性の活躍!?何を訳分からないことを言っているのか』とふんぞり返りながら言われ、思わず泣きそうになりました。ただ、そんな中でも私の声に耳を傾けうなずいていただける方がいました。『これから女性活躍の時代は来る』と言っていただき勇気がわきました」。

 

今では女性活躍に対して社会の認識も変わり、女性を大切にすること・女性が活躍するにはどうしたら良いかを考える風潮になってきた。色んな事に耐えてきた甲斐があったと感触を得ている福森氏。今後、社会一丸となり女性活躍を推進するために必要なことを伺った。

 

男性、女性という時代ではなくなってきた。ですがやはり女性の雇用にはたくさん課題があります。「女性である私でもライフイベント(結婚・出産・子育て・介護)があることに悩んできました。それだけに男性はもっと悩むであろうと思っています。今、女性活躍推進に成功している会社も多くある一方、イマイチうまくいっていない会社もあります。その違いを考えたときに【男性の応援があるかないか】であると感じています。今までの経済は男性活躍で成り立ってきたので、男性社会の風潮ももちろん大事だと思っています。『女性に活躍してもらいたい』と女性活躍を推進するならば、「女性が頑張れ!」「女性活躍だ!」と押し通すより、女性が働くことの応援をお願いしたい。男性の応援が肝となります。

会社玄関

応接間

女性が自立し活躍できる箱として

 

アイキャンディ㈱に社名変更したのは福森氏が社長就任した1年後の2008年。社名の由来は『目に楽しいものを世の中に作っていきたい』という想いから。

 

「女性が自立して活躍できる場を箱として作っていきたいです。仕事を行ううえでも、これじゃないといけないというこだわりはありません。私は社員みんなが主役として活躍してもらうためのサポート役。一人ひとり考えてやりたいことを実現してほしいと思っています」。

 

編集後記
愛情と信念を持って妥協なく社員と向き合う福森氏と、それに共感する社員の方々。“プロの女性集団”として社会に貢献し続ける社内の空気は、華やかさを放ちながらも心地よい緊張感が漂っていた。これは“福森イズム”が浸透し社員全員が自律して仕事をされている結果からくる空気感といえよう。ただ、これを雲の上の理想像と思ってはならない。“女性活躍の鍵は男性の応援にあり”の言葉を胸に、今後の社会のあり方を考えていきたいと強く感じた。

 (取材日2019年3月11日)