高千穂精機(株)バックナンバー

『「販売だけの商社」ではなく「創造する商社」!』

※記事は取材日(2012年2月7日)時点の内容です。

 

取材先  高千穂精機株式会社(代表取締役 渕野善男)

所在地 八王子市北野町507-8

電話 042-644-8511

URL  tsk-mt.com/

      代表取締役の渕野善男社長

 ものづくりをする上で、製品に欠陥がないかチェックしたり、耐久度を調べる計測や試験は欠かすことのできない作業である。高千穂精機(株)は創業以来そうした試験と計測の専門商社として多くの企業とやり取りをするだけでなく、顧客の要望に応えるための製品開発までを行っている。

 

 ただモノを販売するだけではなく、顧客からの要望を聞き、「創造する商社」を目指す…今回はそんな高千穂精機(株)代表取締役の渕野善男社長にお話を伺った。

 

 

顧客の小さなニーズにも応える開発力

 1959年に神田で創業された高千穂精機は現在53期目。創業時から試験機や測定器の商社として活動している。「商社をやると色々な仕入れ先や数多くの納入先と付き合うことができる。そうすると様々な情報が入ってきます。そこからお客様のニーズやマーケットを知ることができます」高千穂精機の取引先は実に4000社以上。大手の民間企業から官公庁や大学まで幅広く取引をしている。

「試験機の開発のなかでも顧客が要求するニッチな分野だからこそ、そのニーズにこたえる必要があり、ニーズに合わせたカスタマイズが可能になる」渕野社長は自社の開発力に自信を持って応えた。

       数々の特許
 
 製品の開発は自社で行うが、製造は外部にも委託している。試験機、測定
器は参入しにくい分野でもあり、また壊れにくいという面から自社で在庫を抱える
リスクを減らし、小さなマーケットでも採算を合わせているのだ。
 

 

2年連続『多摩ブルー・グリーン賞』受賞

       小型全粒粉装置 『多摩ブルー・グリーン賞』は、中小企業の優れた技術や経営手腕を評価・表彰する多摩信用金庫が行っている地域経済の活性化を目的とした賞だ。 高千穂精機(株)は2010年度には「小型全粒粉装置」で、2011年度には「気体分析式の漏れ検査機(以下製品名:ナイト)」と2年にわたり賞を受賞している。「小型全粒粉装置」は小麦などをロスなく微粉末に変えられる装置で、「ナイト」は密封製品内の特定ガスを利用してベルトコンベアで製品を通過するだけで漏れ検査を可能とする製品だ。  高千穂精機は創業直後は大学官公庁向けの試験設備の販売で成長した。その後40年前から材料評価試験機の製造・販売を手掛け、さらに30年前から食品・薬品業界向けに検査機の製造・販売を開始した。これまでの販売先とはまったく違う業界で、戸惑うことも多かったが、その時に培った技術やノウハウが今回の受賞につながっているそうだ。「時代によって取り扱うべきものは少しずつ変わっていきます。商社機能を活かしマーケットを開拓して製品を生み出すことが大切です」 

 これからの食品業界では製品の“安全・安心”というテーマは欠かすことはできない。“安全・安心”な食品を提供するために計測器の役割は非常に大きいものになっている。まさに時代を先取りした製品といえるだろう。

 
   気体分析式の漏れ検査機『ナイト』

 

 

日々の積み重ねが「商い」になる

 渕野社長は現在4代目にあたる。3代目までは会社の創業メンバーが社長に就任していたが、渕野社長は生え抜きとして会社を受け継ぎ、現在の役員も生え抜きの方ばかり。そんな渕野社長にこれからの高千穂精機の方向性についてお伺いした。
 
「無理に拡大しようとせず、国内で足元をしっかりと見ながら経営することが大事です。会社には限られた力しかありません。ですからその力が最大限発揮されるようにしたいですね。次代の社長に関してもその職責に見合う能力がある人がその時代に合うように会社を発展させていってほしいですね」
 
 マーケットを見逃さない情報への積極性と、堅実に足元を見ながらじっくりと成長することの兼ね合い。自分のできる範囲でできることをやり、少しずつ前進していく。「商い」の本質がここにある。
   本社(北野町)テクノセンター内の様子

 
編集後記
高千穂精機(株)はかつて神田で創業し、上福岡、航空公園、高田馬場と3か所に工場や営業所があった。効率化を目指し、全てを一か所にまとめるために5年前八王子に移転した。70名の社員の皆さんは技術者の方から営業の方、事務の方まで生き生きと仕事をしている。
商社とメーカーのよいところを取り入れて堅実に成長している高千穂精機の今後が楽しみだ 。
(取材日2012年2月7日)