CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第62回 伸和プリント工業(株)

プリント基板の便利屋を目指す少数精鋭の技術者集団!

取材先 伸和プリント工業(株)(代表取締役 山田 和夫)

所在地 八王子市川口町1487-48

電話 042-654-6905

e-mail info@shinwa-print-ind.co.jp

URL http://www.shinwa-print-ind.co.jp/

代表取締役 山田 和夫さん

デジタルカメラ、パソコン、ワイドテレビなど、ありとあらゆる電子機器には、プリント基板が入っている。電子機器の中をのぞくと見える、細かな部品がたくさん載せられたボードのようなものがそれだ。CPUなど演算装置が、電子機器の“頭脳”ならば、プリント基板は“背骨”といったところか。プリント基板には、あたかも“神経”の如く、細かいピッチで配線がなされている。この配線が途切れていては、高度な能力を持つ機器も機能しなくなってしまう。この重要なプリント基板の分野で、“便利屋”として存在感を示している企業が、伸和プリント工業株式会社である。今回、伸和プリント工業(株)代表取締役の山田和夫(やまだ かずお)さんに、プリント基板メーカーとしてのこだわりを語っていただいた。

 

 

少数ながら一味違う! ~少数精鋭の技術者集団を目指して~

伸和プリント工業は、山田さんが31歳の時、昭和57年に創業した。山田さんは、7年間勤めたプリント基板メーカーを、「自らの経営ポリシーを貫く」ために退社し、設立した。前職では、設計、製造、購買、営業とあらゆる工程を経験したことが、今となっては経営者として役に立っているという。

山田さんは、決して会社規模、売上高を大きくすることにこだわってはいない。自社を「プリント基板屋としての最少ユニット」と語るとおり、必要最小限のラインを導入し、20年来蓄積してきたノウハウで勝負しているのだ。プリント基板は、電子機器である以上、ありとあらゆる製品に使われるものである。伸和プリント工業は、中でも産業用機器向けに特化し、多品種少量で、しかも他社に出来ない高付加価値の基板を製造する「技術開発密着型」企業として歩んできた。会社の規模を大きくすると、戦う土俵が変わってくる。それゆえに「小回りの利く、少数精鋭の技術者集団」として、クオリティの高い仕事をするための“適正規模”で事業展開しているのだ。

写真は、伸和プリント工業(株)東京営業所。近隣

には、本社工場、第2工場が立地している。

 

 

汎用機を道具として使いこなす職人集団!

積層プレス機。伸和プリント工業では、このよう

な汎用機を”道具”として使いこなし、様々な

顧客ニーズに応えている。

伸和プリント工業は、多層基板、両面スルーホール基板、フレキシブル基板、リジットフレキ基板など、様々な製造品目を擁する。これらの多種多様な基板を、種類ごとにラインを導入するのではなく、“汎用機を使いこなす”ことで実現している。特に積層プレス機などは、1台であらゆる基板に対応できるよう、温度プロファイルをデータベース化している。このため、温度設定をその都度的確に変更することで、多種多様な基板を製造することが可能になるのである。これも従業員一人一人が、基板の特性を熟知しているからこそ、可能な芸当なのだ。

また、伸和プリント工業の技術者は、自分が担当する工程の前後工程を意識したものづくりを実践しており、いわば“多能工化”していることが強みである。そのため、一貫ラインの中で多種多様な仕様の基板が流れていても、次の工程にスムースにバトンタッチできているのである。

 

 

高品質の証、UL規格をいち早く取得!

日本のものづくりは、中国を初めとする東南アジアの台頭により、高品質、高付加価値を追求しなくては競争力を保てない時代になっている。そのためにも“高品質”を目に見えるカタチにすることが重要といえる。伸和プリントは、いち早くその重要性に気付き、中小企業にとっては、ハードルが高いといわれるUL規格を取得した。UL規格とは、アメリカで生まれた、電気製品の安全規格で、対米輸出を行うためには必須ともいえる規格である。プリント基板といても様々な種類がある中で、カテゴリーごとに認定を受ける必要があるが、伸和プリント工業は、1982年にはリジット基板、そして2005年にはリジットフレキ基板でそれぞれUL規格の認定を受けた。特に、相当のノウハウが必要なリジットフレキ基板でUL規格認定を受けている企業は、日本の中でも10社程度といわれ、伸和プリント工業の技術力、品質の証となっている。

NC穴あけ加工機。このような最新鋭の加工機も

取り揃えている。

 

開発・設計から基板実装・組立まで、一貫したサービスを提供

ゲートコントローラの基盤セット。このようにプリ

ント基板だけでなく、実装まで請負うことが出来る。 

伸和プリント工業のもう一つの強みは、基板設計から実装までを一貫して請けることが出来ることである。通常プリント基板メーカーは、設計から基板製造までを担当し、その後は実装専門メーカーが担当するという分業型がほとんどである。つまり、「基板が仕上がってから初めて、実装の準備が出来る」のである。それでは、どうしてもタイムラグが生じてしまう。顧客から見れば、実装された上でようやく性能試験などを行うことが出来ることを考えれば、基板製造のみでなくトータルとしての短納期を望んでいるはずだ。そこで、伸和プリント工業では、実装部門を持つことにより、実装を想定した基板設計を可能とするとともに、基板の製造に仕掛かった段階で既に実装データが起こされ、パラレルで実装準備に入ることが出来る。この一貫製造により、トータルタイムを短縮することを可能としたのだ。
 山田さんは、「本来、“基板屋”としては、実装まで出来てこそ、より良い製品を提供できる。」と、今後も実装工程の受注を積極的に伸ばしていくとのことである。

 

 

プリント基板にまつわる悩みを解決! ~プリント基板の便利屋として~

プリント基板にまつわる顧客からの要求は多種多様だ。1枚から作って欲しい、早く試作品を作って欲しい、精度の高い基板が欲しい...などなど。それを引き受け、顧客の要望に見事に応えていく、伸和プリント工業。「うちは、際立った強みを強調するのではなく、お客様にとっての便利屋でありたい。」と語る山田さん。その例として、世界最小CCDカメラに組み込まれた基板を紹介しよう。大手映像機器メーカーが、小型のCCDカメラを開発するにあたり、「よりコンパクト、かつ集積度が高く、電磁波ノイズも少ない基板」という厳しい条件の基板を探していた。そこで、伸和プリント工業は、リジット基板とフレキシブル基板の製造ノウハウを活かし、高集積のリジットフレキ基板を製造したのである。大手基板メーカーとの競争となったこの基板であるが、汎用ラインを“道具”として使いこなし、「少量でも高品質の基板を安価に提供する」ことに成功し、見事勝ち取ったのである。

薄物対応化学研磨装置。鉛フリーに対応し、耐熱

プリフラックス処理を行うためのラインである。

 また、精密機器メーカーが、半導体素子と配線との結合部のピール強度(引っ張り強度)が、どうしても思うように上がらず苦労していた。これを、山田さんは「ちょっとした発想の転換」で、数倍にも強度を上げる工夫をしたのである。こんな、プリント基板そのものの“悩み”とは異なる課題も、培ったノウハウと、アイデアで見事クリアしてしまったのである。まさに、プリント基板にまつわる問題を解決する「便利屋」なのだ。プリント基板メーカーが多数集積する八王子で、ひときわ輝く企業、伸和プリント工業の今後に注目したい。

 
編集後記
日本における電子機器の生産比重は、産業構造の変化により、家電製品からIT機器、デジタル機器へとシフトしている。この結果、プリント基板も多層プリント基板や、フレキシブル基板など高密度、高機能化している。そんな中で、伸和プリント工業は、自らの身の置き場をしっかりと見極め、創業当初から「産業機器向けの基板」に特化し、たった3人でのスタートから、今では従業員数65名を数えるほどに成長した。産業用ゆえに、民生品向けと異なり多品種少量生産が余儀なくされる。中小企業にとって、その都度ラインを組替えたり、新たな設備投資をすることは、極めてリスクの高いものである。その中で、伸和プリント工業は、たくみにツールを使いこなし、多様なニーズに対応するという“活路”を見出したのである。この山田社長の経営手法は、他の中小企業にとって、お手本となるものだろう。
 もう一つ、印象深かったことは、山田社長の人柄である。とても社長とは思えないくらい気さくで、行動的だ。社員と同じ目線で動き回っている。今、八王子だけで3箇所の拠点があり、拠点間の物流を社長が自ら行っているのには驚いた。社員の方も当然のように「これ、お願いします。」といって製品を預けるほどだ。この社風を作り出した山田社長はすばらしいと感じた。社員との距離感が無いために、社内の様子、製造過程などをしっかりと把握できているのであろう。社員の方々の生き生きとした表情が、とても印象的な取材であった。
(取材日2006年3月15日)