CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー
第54回 (株)クレステック
顧客第一の思想で、時代をリードする技術を追求
取材先 (株)クレステック(代表取締役社長 大井 英之)
所在地 八王子市大和田町1-9-2
電話 042-660-1195
e-mail info@crestec8.co.jp
代表取締役社長 大井 英之さん
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「国会図書館の全蔵書を記録できる角砂糖サイズのメモリー」。こんな言葉を聞いて、みなさんはどのように感じるだろうか?ナノテクノロジーによって、こんな夢物語のようなことが、実現できる可能性が出てきている。ナノとは、10億分の1のこと。ナノテクノロジーとは、10億分の1メートル(ナノメートル)単位の世界で、物質を加工する技術なのである。今、ITやバイオテクノロジーと並んで、21世紀の産業競争力の源泉といわれるナノテクノロジーを追求し、日々研究開発を行っている会社が、株式会社クレステックである。今回は、(株)クレステック代表取締役社長の大井英之(おおい・ひでゆき)さんに、ナノテクノロジーに賭ける想いを語っていただいた。 |
私たちの未来を拓く、ナノテクノロジー
自分の信念を試すために… ~創業秘話~
ものづくりは、徹底したMarket Inの発想で!
大井社長は、常に「世の中のトレンドを見据えて、製品化していかなくては駄目」と、ユーザー志向、徹底したMarket Inの発想を持ちつづけてきた。その思想は、様々な形で結実している。クレステック創業後初めての大仕事として、大手電機メーカーとの共同開発のチャンスを得ることができた。メーカーが5年かけて開発にチャレンジし、実現できなかった装置を、1ヶ月で実現。クレステックの技術力、製品開発力の高さを証明したのである。その装置にまつわる特許取得の際、大井社長は、「ユーザー志向とは、ユーザーと密着すること」と捉え、メーカー(ユーザー)との共同特許を提案した。加えて、ユーザーとの共同特許にすることで、「アプリケーション側の請求項目も得る事が出来、特許の質が格段に上がる」との狙いもあった。結果として、ユーザーからのフィードバックを得られるとともに、知名度の低いクレステックが、メーカーとの共同開発により、製品の信頼獲得に結びついたことは、大井社長の発想の賜物といえる。
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また、クレステックは、ニーズを捉えるための戦略として、受託加工事業も行っている。受託加工のほとんどが、研究開発用の試作である。現在では、一品モノだけでなく小ロット生産も手がけており、売上も増加してきている。大井社長は「受託加工を通じて、世の中のトレンドを察知することができる。まさにアンテナの役割なんです」と語る。世の中の課題は何か?どのような加工が求められるのか?そのような技術動向を探り、次なる製品開発へと繋げているのだ。
物事を多面的にとらえ、世界市場を視野に事業を展開!
クレステックは、既に海外の市場に目を転じている。その足がかりとして、本年8月英国にクレステック・ヨーロッパを設立した。「ナノテクノロジーは今後、様々な分野に応用の利く技術。これから益々チャンスが広がっていくはず」と、大井社長の目は、既に“世界”を見据えている。
編集後記
ナノテクノロジーという言葉は、1999年9月にアメリカのクリントン大統領(当時)が提唱した「ナノテクノロジーイニシアチブ政策」、そして2000年1月の予算演説の中で「議会図書館の全情報を詰め込んだ角砂糖ほどの大きさの記憶装置、そして悪性の腫瘍を初期の段階で取り除く技術、これらを20年後に実現するため連邦政府が最大限の支援をするのです。」と例示し、5億ドルの予算を投じることを表明したことで一気に広まった。これを受け、日本においても、ナノテクノロジーを重点産業として位置付け、研究開発の機運が高まっている。
ナノテクノロジーは、情報通信分野だけではなく、医薬、新素材、そしてバイオテクノロジーなど幅広い分野に応用が利く技術だ。現在、世界各国で国家を挙げて取り組んでいるこの技術は、どこの国にとっても、どの企業にとっても等しくチャンスがある分野ともいえる。大井社長は、仕事で中国を訪問した際、ある大学教授の論文を見てそのレベルの高さに「必ずしも日本がリードしているとは言い難い」と実感したという。
国内に目を転じてみると、「ナノテクノロジーの製造業で成功したと言える上場ベンチャー企業はまだ無い」と大井社長がおっしゃるように、中小企業にとってもまだまだこれからチャンスが広がる分野なのかもしれない。クレステックのような技術力の高い中小企業が、世界にはばたき、“ナノテク立国日本”と呼ばれる日を期待したい。
(取材日2003年9月22日)