CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第38回 (株)テクノメイト

何よりも『製品』が雄弁に語ってくれる

取材先 (株)テクノメイト(代表取締役 芦田春幸)

所在地 八王子市高倉町7-24

電話 042-646-4612

e-mail ashida@technomate.co.jp

URL http://www.technomate.co.jp

 代表取締役 芦田春幸さん

「温度・圧力・流体を科学する」をテーマに、温調器、高圧ポンプ、薬液供給装置といった分野で絶大な信頼を得ている会社がある。石川工業団地に隣接して立地する有限会社テクノメイトである。従業員5名という小規模な会社ながら、高度な技術が要求される機器の設計、開発、製造さらには機器に組み込むファームウェアの開発まで一貫して行っている。今回は、代表取締役芦田春幸(あしだ・はるゆき)さんに、ものづくりに懸ける思いを語っていただいた。

 

 

温度・圧力・流体の制御技術を武器に先端技術産業のベースを支えている

 「温度・圧力・流体を科学する…」これは、芦田さんの名刺や社名の看板にも書かれているキャッチコピーだ。ここから伝わってくるように、テクノメイトが得意とするのは、温度、圧力、そして液体の流量を制御する装置の開発・設計である。主力製品は高圧ポンプユニット、純水加熱装置、薬液供給装置といった、半導体製造には欠かせない装置ばかりで、オファーが来るのは半導体製造など先端技術分野の大手企業からである。生産はOEM供給に特化しているため、テクノメイトの名が表に出ることは無いが、その技術力は折り紙付きだ。
   従業員数5名ながら、次々とハイテク製品を生み出すテクノメイト。 
 社員は5名。その中で製品を設計・開発するのは、経理担当の芦田さんの奥さんを除く、実質4名である。部品や筐体の板金などは外部から調達しているが、装置設計やアセンブリ、組み込みソフトウェア(ファームウェア)に至るまで、全て自社で行っている。併せて技術的なコンサルティングも行うなど、技術提案を含め一貫してユーザーの要求に応えられる技術力やノウハウを持つ。これが、テクノメイトの最大の強みである。
 

 

ものづくりへのこだわり

    ものづくりの基本は環境整備からとばかり、整然と工具類が並ぶ。 芦田さんは千葉県浦安の出身。魚の行商をしていた父の手伝いを通じて商売の機微を学んだ。「将来は、サラリーマンになろう。そのトップである社長になりたい」と強く思ったという。
大学を卒業した芦田さんは、大企業よりも中小企業の方が、「自由にやりたいことが出来る」と考え、外資系の防災関連機器メーカーに入社した。そこの自由に研究が出来る環境の中で、芦田さんは独学で温度調節器や煙感知器などの開発を手がけ、技術を磨いていった。その中には、世の中を席巻していたゼロックスコピー機の温調器の設計などがある。
 しかし、常に「社長になること」を夢見ていた芦田さんは、「唯一経験していない営業の経験を積もう」と半導体関連商社に転職。ここで、経営者として必要な売り込みや資金回収といった経験や知識を積んでいった。それらは「確かに今に生きている」と言う。同時に、職場では管理する立場に立つようになり、現場からは段々と離れていくことになった。その中で「常に現場と接点を持ちながら、一生ものづくりに携わっていたい」という想いはいよいよ強くなり、製造業として創業することを決心したのだった。

 

 

技術を武器に厳しい時代に大海原で舵を取る航海士

 芦田さんが創業を決心したのは48歳のとき。その意思を伝えられた家族の反応は非常に厳しいものだった。サラリーマンとして充分に活躍し、50歳が目前。普通なら、「後はリスクを避けて無難に勤め上げる」と考える時期だ。芦田さんの家族も「その年になって何故?」としか思えなかったのだ。しかし、最終的には奥さんが芦田さんの熱意を受け止めた。「男として自分の好きな道を貫くことには反対しない。でも家を失うようなことはしないで」。そして、奥さんも経理担当として、会社を支えることになったのである。奥さんのこの言葉を胸に1994年7月、芦田さんは技術を武器に大海原へ舵を取り始めた。Technology(技術)とMate(航海士)から取った社名、テクノメイトそのものスタートだった。
   柔和な表情からは想像もつかないほど、大胆な創業エピソードを語ってくださった芦田社長。

 

“信頼”こそが、事業を行う上で最も大切なもの

   製品(スラリー供給装置)の説明をする芦田社長。装置に組み込むソフトウェアまで自社で設計している。 事業開始に当たって芦田さんは、「手広く事業を展開するのではなく、自分達の強みを活かしていこう」を経営理念とした。大企業の開発スタッフは一人で多くのテーマを持っているため、1つ1つをじっくり追究できない。だからこそ、より専門的な分野ならば零細企業でも勝てるはずだと考えたのである。  事業はスタート早々、ビッグチャンスをつかんだ。元取引先の営業所長から突然の依頼が舞い込んだのだ。大手装置メーカー向けの薬液供給装置の開発だった。その営業所長は3年前に会社設立の挨拶回りをした時、芦田さんが起業目的について話したことを覚えていてくれて、今回の仕事は芦田さんに任せるのが一番良いと決断してくれたのだ。
しかしその仕事はあまりに大きく、とても零細企業の手に負えるような代物ではなかったが、「何とか引き受けたい。なせば成る」の一心で引き受け、見事装置を完成させた。その装置はユーザーの信頼を勝ち取り、トータルで20台の受注に繋がった。その結果、創業間もない小さな会社が、ダイヤモンド社の法人所得ランキング85,000社に名を連ねることになったのである。
 ものづくり企業にとって「信頼」はすべての源である。そして、その信頼は製品を通じて得るしかない。「何より製品が雄弁に語ってくれるのです」。芦田さんの経営理念である。

 

 

今後は装置メーカーとして自立を目指す

技術力と製品開発力で信頼を得てきたテクノメイトだが、悩みが無いわけではない。それは、営業力である。何しろ、芦田さんを含め4名の技術者と経理で構成する会社だ。なかなか営業にまで手が回らず、現状は芦田さんが開発・営業担当だ。しかし、この開発・営業担当はしたたかな強さの持ち主で、開発担当としては半導体不況のあおりを受け、仕事が減ってしまった昨年も、営業担当としては「これ幸い」と新規取引先の開拓に成功しているのである。
    純水を高圧で射出するポンプユニット。設計・開発を全て行っている。

「今はOEM製品だけだが、今後は自社製品のラインナップを揃え、メーカーとして自立していきたい」。これが芦田さんの次なる事業展望だ。テクノメイトが持っている、温度、圧力、流体制御技術は、半導体製造分野に限ったものではない。厳密に温度調整が必要な装置や、製造工程の中で液量調整、高圧噴射が必要な局面はいくらでもあるはずだからである。そこで、自社技術の応用範囲を広げる意味でも、「他分野の企業との交流の中から、新たな製品開発へのアイデアが浮かんでくるかもしれない」と、異業種交流会への参加も積極的である。
芦田社長が持ち続ける夢は「新しい時代の求めるニーズを形にする」こと。今後も、テクノメイトから画期的な装置が次々と生み出されてゆくことだろう。

 
編集後記
テクノメイトの工場を見学させていただいたが、工具や部品が見事なまでに整然と並んでいた。これも芦田社長の長年の現場経験から来るものだそうだが、この几帳面さと裏腹に創業エピソードにあるような大胆さも兼ね備えているからこそ、現在のテクノメイトがある。この真面目さが製品にも反映され、取引先からの信頼につながっているのだろう。

ところで、大手企業は中堅程度の会社としか直接取引をしないという。そういう意味ではテクノメイトは有限会社ながら直接大手企業と取引しているレアなケースなのだろう。この「@Co.Hachioji」という企画の狙いでもあるが、従来の商慣行に囚われず、身近なところに高い技術力を持った企業があることをもっと知っていただきたいと思う。

(取材日2003年2月24日)