CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第30回 (有)平本金型製作所

『過剰品質』の最良のバランスを突き詰めて

取材先 (有)平本金型製作所(代表取締役 平本信夫)

所在地 八王子市中野上町1-13-8

電話 042-622-4100

e-mail info@hiramoto.co.jp

URL http://www.hiramoto.co.jp

 代表取締役 平本 信夫さん

いち早くインターネットの持つ力に注目し、それを活用してパソコンと製造業を結びつけてきた会社が平本金型製作所である。同社が得意とするのは自動車部品金型、それも比較的難易度が高いとされる型の製造である。長年培ってきた実績と経験と新しい道具としてのITを活用して、『良いものづくり』を実践し着実に業績を上げている同社を訪ね、専務取締役である平本信夫(ひらもと のぶお)さんにその思いを伺った。

 

 

製造業とパソコン

平本金型製作所が自社のホームページを立ち上げたのは今から10年前の1993年。手軽るなHP(ホームページ)作成ソフトもなく、HPを持つ日本企業はほんの一握り、しかも大半は名だたる大企業という時代の中で、早々と中小製造業として自社HPを立ち上げていたのである。
当時から「パソコンは趣味の1つでした」という平本専務は、製造業とパソコンをいかに繋げられるかを常に模索していた。だから、HPの立上げはその模索への1つの解答であると同時に、「ネットを使った会社のPRと金型の通信販売が可能ではないか」という挑戦でもあった。そして、その結果、「確かにインターネットは手軽さで便利だし、有効でもある」という手応えを得る一方、「最近、自分なりのある結論にも達した」と平本さんは言う。
      製造業とパソコンについて語る平本専務。自社 HPの立ち上げは、コンピューターのプログラム言語を独学でマスターし作成したものである。
つまり、「ネットは使い方次第では製造業の潰し合いで終わってしまう」というのであるネット上では見積もりが簡単に取れる。見積もりを依頼する側からすれば、取引先の対象は確かに海外も含め広がるが、相手の顔(実力)は見えてこない。見積もりは「製品の良し悪し」ではなく、「価格」だけで比較することになる。見積を依頼される側からすれば、「手間隙かけても見積もっても、結局は“安いところ”に決まってしまう」のが現実でもある。しかし、「金型はプレス、プラスチック、ゴム、ガラスなど『1品一様』で、一緒くたにできない。また製品を納入した後の寿命(強度)等の勝負もあり、安かろう悪かろうで済むものでもない」
そこで、平本さんは「安易な見積もり合戦に振り回されない」ための対策を講じた。「HPに自分のところの製品や製造機械等の情報を極力載せるように工夫した」のである。これにより、いい加減な見積もり依頼は大分減少したという。積極的な情報公開が顧客の選別にもつながるのである。
 

 

経験からソフト(適正価格算出システム)を開発し、無料で提供

    高速のマシニングセンタ。難度の高い自動車部品金型等はこれで製作される。 ところで、中小製造業の経営者には「製造機械を止める」=「仕事がない」という不安が強くある。そのため、「多少損をしても、まずは今日の仕事があること」を優先させてしまいがちになる。それが上述のような見積合戦や低価格競争を生む温床になってしまっている部分もある。しかし、これでは中小製造業は疲弊するばかりである。「それならいっそのこと、価格競争に巻き込まれないためにも、業界共通のスケールとなるようなシステムを作ればいいのでは」と考えた平本さんは、「値段のばらつきを防ぎ、会社が潰れないような価格を決める」ソウトウェア”適正価格算出システム”を開発した。
「これをつくるには、金属に穴をあける時間等の作業工程のひとつひとつをストップウォッチで計ったりして非常に苦労した」と笑いながら振り返るが、このシステムは、自らもメンバーであり、その代表の内原康雄社長とは古くからの付き合いもある「NCネットワーク」で無料提供したという。平本さんの開発へのバイタリティと情報に対するオープンネス(開放的で率直)が伝わるエピソードである。

 

 

好きこそものの上手なれ!

金型製造業の経営者といえば技術肌のイメージだが、実際には商人肌の性格の人も少なくないと言う。平本金型製作所の2人の経営者もその例外ではない。1967年(昭和42年)平本製作所を起こした平本専務の父である喜文(きぶん)社長は、戦後の数年間、パンを焼き売っていたというし、専務である平本さんも、大学を中退後、自分の会社を手伝う傍ら、夜にはダイビングのショップ(因みに、パソコン以外のもう1つの趣味だとか)で接客のアルバイトを数年していたという。「そこはいわば”人種の坩堝”。いろんな職種の人がやってくる。そういう方々と接し話をできたことで、今の営業能力が身に付いたと思う」と平本さん。
まさしく『好きこそものの上手なれ』とはこのことか。平本専務は効率的且つ良いものづくりを目指し、パソコンを使用しての図面作成は当然のことながら、20年も前からNC制御の機械を導入し、着実に成長していった。
     今、作業している機械は150tのプレス機。プレス屋さんに依頼する前に圧の強さによる型の曲がり具合などの確認を自社で行っている。

 

売りは過剰品質!?

さて、平本父子にはもう1つ共通することがある。それは「ものを作ることは楽しい」である。平本金型製作所の”売り”は『過剰品質』だというが、それもこの2人の性格に由来する。しかも、この『過剰品質』、材質の強度を上げるために、高い材料を使用するというような単純なことではない。設計の段階から、アッセンブリだけでなく1つ1つのパーツまでの完璧な図面を書くことなのである。「この業界は組立時に多少の部品のずれがあってもその場で修正するという慣習があるのですが、そのような作業が生じないようにするためです。それに、ズレを承知で作っていては、人は手抜きをしたくなるけれど、そんなものづくりは認めたくないから」と平本専務はその理由を語る。しかも、一見、「過剰」なこの態度が結果的には生産コストの削減や短納期の実現につながったという。「良いものを作るためには、無駄と思っても手間を惜しまないこと」平本金型製作所がメーカーから信頼される秘訣はまさにここにある。

 

 

良いものづくりを目指して

「小さい会社だから、色々できる」と専務は言う。『過剰品質』にしても、小さいから会社としてオーソライズするのに時間がかからずに、即”実行”となる。小回りがきくのである。「会社を大きくするのが必ずしも良いとは言えない。大きな会社になると良いものは単なる副産物になりかねないからです。良いものを作るには良い人数(現在社員6名)があるんです。また、社員も物質的な豊かさイコール精神的な豊かさとはなりにくくなってきているから、会社が潰れなきゃいい」。と、飽くなき利益追求ではなく『良いものづくり』にあくまで拘るのが平本金型製作所の方針なのである。
   「過剰品質最良のバランスを突き詰めて行きたい」と今後の抱負を語る平本専務。
 最後に平本金型製作所の今後の展開を尋ねると、「『過剰品質』から本当に過剰な部分(製造工程を含む)を削っていき、最良のバランスを突き詰めていきたいですね」。平本専務は笑いながら答えてくれた。

 
編集後記
 話を聞き終え工場内を見せて頂いた時、色々な形の穴があいている金属版(金型)を見つけた。「プレス企業はこれを見ただけでどんなものができるのかわかるのか」とまさに素人質問をぶつけたところ、返ってきたことが、「金型をプレス屋さんに納品する際には専務が同行し、作業工程から圧の掛け方にわたる部分まで指示をする」とのことだった。曲げ方ひとつで強度に影響が出るし、作業工程も効率よく行なうためには指示は欠かせないというのである。メーカーから見れば孫請けになる部品の金型製造の会社。失礼ながら部品の型をメーカーからの要請で製作しているものだと思っていた自分が恥ずかしく思えた瞬間だった。
平本金型製作所には、今後も「良いもの」を世に供給し続けてもらいたい。
(取材日2002年12月18日)