CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第28回 オーディオテクネ インコーポレイテッド

我々が目指すこと・・・それは『原音の探求』

取材先 オーディオテクネ インコーポレイテッド(代表 今井清昭)

所在地 八王子市左入町596-4

電話 042-691-2678

e-mail imai@audiotekne.com

URL http://www.audiotekne.com

代表 今井清昭さん

オペラ発祥の地イタリアで、“Made In Hachioji”のオーディオ機器が、いくつもの専門誌で絶賛されている。あるオペラ専門誌では、“音の芸術”と称され、オーディオ機器があのフェラーリと同等の扱いを受けている。あくまで“本物の音”を求め、外からは見えない細部にまでこだわる異色のオーディオメーカー。それが、八王子にあるオーディオテクネ インコーポレイテッドである。今回は、イタリアでマエストロとまで称されている、オーディオテクネ代表の今井清昭(いまい・きよあき)さんに、本物へのこだわりとその秘密について伺った。

 

 

日本発のオーディオ機器が芸術作品に!!

「“音の芸術”これを超えるものがあるのか!」。これは、1995年にイタリアのオペラ専門誌「l’opera」にオーディオテクネの製品が掲載された際のタイトルである。オペラ発祥の地であるイタリアで、日本製のオーディオ機器がこれだけの評価を受けたことは、本物しか評価しないイタリアで、オーディオテクネが追求した音が認められたことにほかならない。今井さんは、「オーディオ機器専門誌のように趣味の雑誌ならまだしも、音楽ファンのための雑誌で評価されたことが何よりもうれしい」と素直に喜んだ。それは、オーディオ機器として、技術力を評価されたということよりも、純粋にその機器が発する“音”を評価されたことになるからだ。そう、オーディオテクネの目指すところとは、「原音の探求」であり、それはコンサートホールの音なのだから。その“本物の音”へのこだわりの産物は、イタリアにとどまることなく、今ではドイツ、アメリカへと広がっている。
 イタリアでブレイクしたきっかけは、とあるオーディオ機器の展示会で、同業他社の方が、あるイタリア人ジャーナリストに、「八王子に“音”をウリにしている会社がある」と伝えたことだった。「“音”をウリに」という言葉が、そのジャーナリストの頭から離れず、5年かけて探し回った末にオーディオテクネに行き着いたという。そのジャーナリストがイタリアの商社を紹介したことが、オーディオテクネの名が世界に轟く第一歩だったのだ。
 

 

“音”へのこだわりの原点

今井さんは、小学生の頃から真空管ラジオの組み立てや、アマチュア無線を趣味としていた。それが高じて、やがて社会人としての人生は大手音響機器メーカー勤務でスタートすることとなる。しかし、待っていたのは「会社という組織は、過去の経歴や学歴などを問われ、本当にやりたいことができない所だった」という厳しい現実だった。今井さんは本来、音響機器の設計・開発を担当したかったのだが、自分の意に反して生産工程の分析などのセクションを転々とする。今になってみれば、そうした経験が「品質管理や協力会社との取り引きなどで役立っている」というが、当時は辛い日々だった。
そんな境遇にあっても音響機器への思いは捨てきれず、今井さんはオーディオ機器開発担当から技術的な知識を教えてもらったりしていた。そして、開発者との交流の中から、技術力の進歩とともに、「“音”というものの表現を数値化・視覚化に頼りすぎているのではないか?」という疑問を持つようになる。「果たして、オーディオ機器開発に携わっている者で、どれだけ“本物の音”を聞いているのだろうか?」そう思い立った今井さんは、以前にも増してコンサートに足を運び、一方で独立への思いを馳せていくのであった。

 

 

“製品”へのこだわり

「本物の音」へのこだわりを捨てきれず、今井さんは昭和53年、36歳の時に独立創業した。当初は大手メーカーのOEM製品から取り掛かった。しかし、創業から3年ほど経った頃、「この業界は下降線になる」と今井さんは直感したという。作り手が“本物の音”を理解しないまま、数値に頼った音響製品ばかりが世に送り出されていると感じたからであり、商売替えさえ考えたという。そんな折、ある商社から真空管アンプの開発を依頼された。これに今井さんは熱中し、約3年間かけてトランスを開発、真空管アンプを完成させたのだ。
苦労の甲斐あって、このアンプは非常に高い評価を受けた。それが1つのうれしい刺激となって「アンプを活かすためには、良いスピーカー、プレーヤーが必要だ」と、今井さんは更に開発の手を広げていった。そうなってくると、製品へのこだわりは止まらない。今では、接続ケーブルやインシュレーターといった、アクセサリーも自社製品のラインナップに名を連ねている。

 

手塩にかけた製品だけに、“音”の解るお客さんに買ってもらいたい...

オーディオテクネの音響機器は、ほとんどが受注生産である。製造に取り掛かると、数ヶ月かかるものも少なくない。そのため、機器の単価たるや、驚きの価格になってしまう。趣味の世界とはいえ、そうそう気軽に買えるような代物ではないのだ。だからこそ、「本当に納得してから、買っていただきたい」と、今井さんは語る。せっかく手に入れても、その価値が解らなければ、買った人にとっても、手塩に掛けた機器にとっても不幸なことだ。そんな思いから、とてもユニークな販売手法をとっている。
 お客さんが会社兼工房に訪れると、まず4~5時間は自由に音楽を聞いてもらう。オーディオテクネの工房に入ると、大きなソファーとその面前に、巨大なオーディオシステムが備えてある。数多くのレコードやCDのコレクションが置いてあり、お客さんはこのソファーに身を委ね、しばし音楽を楽しむこととなるのだ。この間、今井さんは一切機器の説明はしない。「説明をしてしまうと、お客さんが洗脳されてしまう。最終的には自分の耳で判断してもらいたい」からだ。一見、高飛車ともとれる“接客”だが、高価な機器だけに後悔して欲しくないという、今井さんの「お客様を思う気持ち」なのである。

 

 

本物へのこだわりは、後継者へと引き継がれてゆく

 今や、今井さんの職人芸は、妻の富子(とみこ)さんや息子の浩亘(ひろのぶ)さんにも引き継がれている。「最初は、技術のことなんて全く解らなかった」という富子さんも、今では接続ケーブルなどアクセサリーの製造や、スピーカーの振動処理などの作業をこなせるようになっている。浩亘さんも、イタリアへ留学したり、今井さんのお手伝いをしたりと着実に2代目への道を歩み始めている。

もちろん、今井さん自身もこれで満足しているわけではない。オーディオテクネの今後について話が及ぶと、「欲しい、買いたいという思いと、実際に購入するという消費行動とは違う。買っていただける、つまり納得していただける製品作りに今後も励んでいく」と力強く抱負を語ってくれた。もはや単なるオーディオ機器ではなく、芸術作品にまで上り詰めた感があるが、Made In Hachiojiのオーディオテクネ製品が世界を席巻する日は近い。

 
編集後記
今回の取材は異色だった。大きなソファに腰を掛け、目の前のオーディオシステムから音楽が流れているというシチュエーションでの取材となった。良くご夫婦でイタリアに招待されるということだが、空港に降り立つと待ち構えていたようにジャーナリストに囲まれることがあったという。取材時に、オーディオテクネが取り上げられた雑誌をいくつか見せていただいた。その中に、“IMAI SAN IN ITALY”というタイトルの記事を見つけたが、「今井さん」が固有名詞化しているのには驚きである。

一方、今までの取材でもあったが、何故こうした職人芸は海外で先に認められ、続いて日本で認められるという流れになるのだろうか?それは、国民性にあるのかもしれない。イタリアはファッションの国と言われるだけに、自分の感性・個性を重んじる国民性があるという。日本人はどちらかというと、他人が良いと評価したものに飛びつく傾向がある。ブランド志向などはその最たるものかもしれない。我々も、もう少し自国のモノの価値を見直すべきなのかもしれない。

なお、三崎町の「憩」という喫茶店(Tel625-2055)にオーディオシステムがフルセット置いてあるそうです。オーティオテクネの“音”を堪能したいという方は、行ってみてはいかがでしょうか?

(取材日2002年12月12日)