CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第3回 中央電子㈱

よい技術を作るのは、よい信頼関係だ

取材先 中央電子(株)(代表取締役 戸田英城)

所在地 八王子市元本郷町1-9-9

電話 042-623-1211(代表)

e-mail http://www.cec.co.jp/CEC/mail/WEB_wwwmail.html

URL http://www.cec.co.jp

 
明神町にある中央電子のオフィス

創業当初から現在まで、中央電子株式会社の開発した技術・製品には日本初、世界初、業界初とつくものが多い。それらの豊富な技術力や製品開発力を組み合わせた複合技術とシステム技術は、病院で使われるカルテ、検体の搬送システムや、主に法人向けのセキュリティシステム、あるいは精密NC工作機など、われわれの身近で随所に活かされている。400人に満たない陣容で、なぜ、そういう一歩先をゆく技術力を生み出せるのか。高橋啓(たかはし けい)社長にお話を伺ううちに見えてきた答は、技術を大事にするからこそ徹底的に「人間的」であることを大事にしている会社だということである。

 

 

仰天の創業エピソード

会社に「性格」があるならば、中央電子のそれは「オリジナリティ」である。先代社長の石井一恵(いしい かずえ・故人)氏によって設立されて以来40年以上、今も脈々と受け継がれているその性格は、仰天の創業エピソードから生まれた。
 当時の日本はエレクトロニクス黎明期、技術や製品に欧米のコピーが蔓延していた。「芸術の世界では模倣は絶対に許されない。それなのに、技術の世界ではデッド・コピーが大手を振っている。それでいいのか」。
懐かしそうに当時を振り返る高橋社長
 昭和34年、大学出たての、ある大手電機メーカーの若き電子回路研究開発担当だった高橋さん(現社長)は、取引先の営業課長であり談論風発の飲み仲間だった石井氏に迫った。「酔った勢いの議論だった」が、石井氏は「それはそうだ」と納得。「小さくてもいい、オリジナリティを大切にする会社をつくろう」と中央電子を立ち上げた。昭和35年、高度成長の波とともに「電子化」の波が日本を覆い始めた頃だった。
 

 

「世界的瞬間」を伝えたアナログデジタル変換器

設立当初の主な取引先は、電気試験所やNHKの技術研究所、電々公社電気通信研究所(いずれも当時)などの先端技術を研究する機関。取り組むのは「世の中にまだないもの」を創り出す技術だった。
そうして実現したものの1つが宇宙中継画像の送受信を可能にするアナログデジタル変換器である。東京オリンピックの映像を衛星中継でアメリカに送るために開発が急がれながら、研究機関から発注を受けた大手メーカーは失敗続き、それで中央電子へという曰く付きの製品開発だった。しかし、創業間もなく当社に移っていた高橋さんは1週間で設計から試作までを実現。その変換速度はそれから10年間世界ナンバー1を維持し続けた。 初の衛星中継画像として知られる「ケネディ米大統領暗殺」の決定的瞬間が報じられたのも、この変換装置があればこそだったのだ。
中央電子は、画像伝送装置などの開発経験を古くから持っている。

 

 

いいシステムは信頼関係から

現在の中央電子が得意とするのは、幅広い分野に及ぶ様々なシステム構築である。そのベースには長年培ってきたオリジナルのエレクトロニクス技術がある。しかし、何よりも「いいシステム、いい技術を作るのはいい信頼関係、いい対人関係だ」と高橋社長は明言する。
 たとえば顧客との仕様打ち合わせも「お互いの技術者が泊まり込みも辞さないでとことんやる。そうすると、ケンカするかうち解けるかのどちらか。たいがいはうち解けてくる」。そうなって初めて本格的な打ち合わせに入れるそうだ。
 「初めて会った犬同士は戦うことではっきりと序列を決める。そして負けた方は勝った方に服従する。技術者の世界もこれによく似ています。顧客とメーカーとか、会社の中の上下といった位置関係とは全く無関係。イニシアチブを決めるのは純粋に実力関係です。それが上手く決まるとシステム設計というのはうまくいく」。
”国内初”アルミ押出し成形によるサーバー・ラック

 

決め手は「職場の共感性」とマトリクス型組織

中央電子では、「事業部制」と「間接部門」とのマトリクス型組織を採用している。技術・営業等、複数職務の者を含め、20~30人程度をまとめて16の「事業部」を編成し、その事業部組織を品質保証や財務・総務・人事などの8つの間接部門がそれぞれ横断的に貫く、というものだ。

ある特定の専門技術に関しては、上司よりも部下の方が勝る、というケースも珍しくはない。そこで高橋社長は「職場の共感性」を最も重視している。職場の誰かがうれしければみんなもうれしい、悲しければみんなも悲しい、それが職場の共感性である。「これが可能な職場の単位はせいぜい30人くらいまで」と言う訳で中央電子の事業部はこれが「定員」。こうすると「研究開発も営業も製造も、顧客との距離が近づき、顧客とのインターフェースが密接になる。そうすれば、またよいシステム作りにつながる」というメリットもあるという。

そのせいか、新製品が売れないのは技術が悪いからと営業が言えば、技術は営業の努力が足りないと反駁する…と、どこの会社でも起こる「みんな自分の部署以外のことばかり非難するといった話は当社では聞きませんね」。たとえばトラブルやクレームが発生する、対応に奔走する営業マンをすぐ横で見て、技術者もその原因究明は自社で納得がいくまで徹底的に調べ、どう解決すればいいかを同じ立場、同じ体温で一緒に考え出す。

こうした「事業部制」を採用する一方で、中央電子の組織は組織運営に必要な専門知識を持つ本社機能(間接部門)グループのノウハウを活き活きとした事業部活動に横断的に反映・サポートする「マトリクス型」になっている。  「人で始まり人に帰る」とは、「職場の共感性」と「経営組織」がお互いに助け合ってお互いを活かす、そんな仕組みが、「中央電子のマトリクス型組織」である。

「緊急通報システム」中央電子が誇る映像処理技術を駆使したセキュリティシステム。監視システムや出入管理システムなどトータルなシステム提供が可能。 

 

 

中央電子が生み出すユニークな製品

ほんの一例に過ぎないが、中央電子は数々のユニークな製品を開発している。

の写真は、脳の活動部位を三次元画像表示する装置。脳障害の部位を特定でき、臨床診断に役立てることができる。

 右の写真は、「カフェテリア方式自動決済システム」。
カフェテリア方式のレストランや社員食堂における料金決済を自動化することができる。

 
編集後記
今回から、編集者による編集後記を書くことになりました。実際に企業を取材した記者(!?)が、見て、聞いて、感じたことを書かせていただく欄です。
 中央電子の高橋社長のお話を伺って、技術者としてのポリシーがひしひしと伝わってきました。印象に残ったお話の一つに、機械の”誤動作”のお話がありました。「誤動作とは、あくまで設計した者から見た現象であって、自然の法則に従ったという意味では決して”誤動作”ではない」とのこと。なぜそのような動作が起こるのか、徹底的に調べる姿勢が、技術者には必要なのだという。このあくなき探究心が、数々の製品を生み出すパワーの源なのだろう。
(取材日2002年4月16日)