CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第96回 中西農園

「これからの八王子の農業」

取材先 中西農園(中西 真一 代表)

所在地 東京都八王子市小比企町2719

 

 2016年9月6日、八王子商工会議所と八王子市農業協同組合(JA八王子)が業務提携協定を締結した。これにより生産・加工・販売を一貫して行う6次産業化、農家の所得増大への取り組み、農業の魅力向上などを推進していく。

 そこで今回、八王子で活躍する農家を多くの方々に知っていただくために「中西農園」「浜中園」「番場農園」をCo.Hachiojiで取材させていただいた(「浜中園」11月~掲載予定、「番場農園」12月~掲載予定)。

 

  ◆中西農園代表 中西 真一 氏

 

 

 まずは、八王子市小比企町で農業を営む中西農園代表の中西真一さんにお話を伺った。

 

 中西農園では様々な野菜を生産しているが、その中でも主力商品となっているのがカブ、八王子ショウガ、大根、人参、トウモロコシなど。近年では八王子ショウガの生産量が増えているという。

 

 道の駅八王子滝山のお客さんの中には中西農園のカブ以外は食べられない!という方もいるそうだ。また、この記事を書いている私自身もカブはもちろんのこと、中西農園の採れたてのトウモロコシをいただいてからは、もう他のものを食べられなくなったという口である(笑)。

 

「売り方の多様化」

 以前は、八王子も地方の販売方法と同様に、単一の作物を大量生産して市場に出荷するという形態であった。しかし、今から十数年前から徐々に都市農業化が進み、2007年にできた『道の駅八王子滝山』の存在が、八王子の販売形態を変化させる大きなターニングポイントとなった。農家の中には、市場出荷をやめて道の駅一本に切り替えた方もいるという。
 中西農園も以前は、蚕、小玉スイカ、カブ、大根、人参などを市場出荷する販売形態が中心であった。しかし、中西さんは道の駅ができる前から業界の変化を見据えて、JA八王子青壮年部の仲間たちと共に、多品目の作物を生産してスーパーマーケットに出荷するといった市場外流通にいち早く取り組んでいた。
 八王子の農業はこの十数年で市場外流通がとても増えたという。中西農園でも学校給食、都心の飲食店、、農産物直売所『ねぎぼうず』などが主な販売先に変わってきた。中西さんは言う「八王子産の野菜は消費者に近く、新鮮さが何よりの魅力です。今は変化の真っ只中であり、販売形態もこれからさらに多様化していくでしょう。また実際に、流通の現場では東京産、地場野菜を求める需要がとても高まっていると思います。」

 

「都市農業という仕事」

 中西さんは世の中がバブル絶頂という時期に農業を継承した。大学卒業後、一般企業に就職をしたが約3年で退社をして、中西農園を継承することになる。中西さん自身は、いずれは自分が家業である農業を継ぐという自覚を常に持っていたという。また結婚が事業継承を決意するきっかけにもなったそうだ。
 専従者であった20代、30代の頃は作物を作るということに心血を注いできた。当時は親子の衝突も多かったという。しかし、中西さんは言う。「どんな仕事でも家族経営ではよくある話ですよ。時代、年齢が違えば感じることも違う。私は親子喧嘩をすることは親孝行だと思っています。中西農園の場合は、お互いより良いものを作りたいという思いや考えから生まれた衝突でしたからね。」
 40代、経験を積み重ねて、事業主という立場になるとまた意識は変化し、都市農業という産業に対する責任感が芽生えた。「収穫体験、食育講演、職場体験、新規就農者の研修受入れなど、これらはお金にはならないけれども今後の農家の仕事だと思っています。ただ、これらは農家全員ができることではありません。中西農園の場合は、パート従業員、周囲の方々たちの協力があるからこそ取り組めています。家族経営だけの農家は難しいですよ。野菜作りができないということは農家としての売上はゼロですからね。」
 これは私個人の感想だがお話を伺っていて、都市農業を維持するうえでは、今後、このような取り組みに対してはもっともっと周囲のサポートがあるべきではないかと思った。

 

◆学研から出版された書籍

農業の仕事、中西農園、中学生の職場体験などが記載されている

 

「相続税と労働力」

 都市農業の課題というと、みんな『相続税』、『労働力』と口をそろえる。中西さんからも相続税と労働力はどこの農業も抱えている問題という答えが返ってきた。
 相続税を支払っていくためには農地を切り売りしなければならない。その結果、農地は減り、作物の生産量も自然と減っていくという悪循環…。しかし、近年は都市農業振興基本法が施行されるなど、国の都市農業、農地への見方に少しずつだが変化が起きているという。ただ、この問題に関しては農家がどうこうできる話ではない。
 もう一方の労働力に関して、中西さんは「この先の農業の家族経営には限界があると思います。」と言う。農業人口の高齢化は深刻だが、農業という産業に多くの従業員を雇用するほどの余裕はそこまでないという。仮に雇用できたとしても、都市農業の場合は、広大な土地が存在しないので、ただ闇雲に拡大することが最良な選択とは言えない側面もある。
 また近年の全く読めない気候変動など、環境面の問題が農業には常に付きまとう。

 

「ファンをつくる」

 中西さんに今後、八王子の農業がどうなるかを伺った。
 「若い後継者がいない農家が経営を継続していくことはかなり難しいでしょう。けれども残る農家はあります。将来、何が必要かと考えたとき、八王子の農業の“ファン”を作ること、関心を持ってくれる人を作ることが大切になってくると思います。例えば、繁忙期に農作業を手伝ってもいいよというファンの方。実際に中西農園では、会社を退職したばかりで、体力があり余ったご近所さんがボランティアでお手伝いをしてくれています。キャベツを植えますとお声掛けするとみんな集まってくれます。対価をお支払いすることは難しいですが、収穫した野菜などでお返しすることは可能かと思います。今後、そのような方々が八王子の中で増えていけばいいかもしれませんね。」
 最後に中西さんの最近の趣味について伺った。少し考えた後、
 「昔はバイクや釣りも好きでしたが、最近の趣味は専ら“農業”です。野菜を作ることはもちろん、農業を通じての人とのつながりが楽しい。収穫体験や職場体験で子供たちと話すことは楽しいですからね。」
 趣味は農業と言い切る中西さんの表情からは、やはりこの人がこれからの八王子の農業を支え、進化させていく人物だと改めて感じた。

 


 

編集後記
 実際に学校などの教育の現場では『食』の大切さを学び、教えることが重要視されてきている。野菜を作る中西さんも、学校給食は自分の作ったものが子供たちに消費され、体を作るということが分かっているため、仕事に対する責任感がより生まれると言う。
 何のために、誰のために。消費者が見えることで、仕事に対する情熱がより高まる理屈はどの仕事にも共通することだと私は思う。
 農業に限らず、新たなことを始める時には様々な障害、問題は付きものだ。月日が経過し、この記事をまた見返した時、八王子が農業のファンが溢れる街、農業が産業として維持発展していることを望む。
(取材日2016年9月5日)