CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第25回 (株)プロテック 平成21年より(株)古河総研に社名変更

好奇心を持って物を考えること自体が楽しい

取材先 (株)プロテック 平成21年より(株)古河総研に社名変更

(代表取締役社長 古賀康史)

所在地 八王子市東町7-6 ダヴィンチ八王子ビル2階

電話 042-660-7814

URL www.kogasoken.com/index.htm

e-mail info@kogasoken.com

人生80年時代、定年まで勤め上げた後、第2の人生をどう生きていきくのか?1つのモデルとなるような会社がある。大手企業を退職した後も「企業人として約40年の間に培ったノウハウを社会の様々な場面で活かしたい」と志を同じくするシニアが集まって設立した会社、株式会社プロテックである。社員の平均年齢は60代半ば。今なお知的好奇心旺盛な技術者集団、プロテックの“元気さ”の秘密を代表取締役社長の古賀康史(こが・やすし)さんと高橋宗一郎(たかはし・そういちろう)さんに伺った。

 

 

「日本の産業界に貢献したい!」という熱い志で創業

社長の古賀さんは、元は日立製作所の中央研究所に勤務する技術者。定年を間近に控えた頃、同期4人と定年後の人生について話し合った。すると、4人の思いは奇しくも同じ、「技術者生活40年で培った技術を活かして、世の中の役に立ちたい」だった。それならばと、平成8年に設立したのがプロテックである。社名のProtech(“Promote the Technologies for Century21st”「豊富な技術体験と管理体験を結集して、21世紀を担う技術開発に貢献する」)には、4人の思いがそのまま表れている。

古賀さんたち60~70代の人たちは戦後日本の産業、経済を繁栄につなげてきた世代だ。「最近、産業界では中国に追いつかれたという論調が多いけれど、戦後に新たな産業を立ち上げた世代の存在は大きいはずです。その使い方1つで状況は180度変わるかもしれない」と古賀さんは言う。そうした“人材”を年金受給者として捉えてしまうのか、産業界の“最大の武器”として使うのか。ポイントはそこだ、というわけだ。「人間には“隠居”という言葉があるが、動物は自分で食べられなくなったら終わりです。我々も“まだまだ隠居はしない!”という意気込みで仕事をしているんです」。

 

 

約80名にも及ぶ技術者の知恵と経験の結集

プロテックの事業は、約80名から成る技術者の“知恵”を結集した、技術コンサルティング・評価、新技術の事業化支援、技術移転のコーディネート、科学技術論文の翻訳・抄録など多岐にわたっている。社員は半導体や化学、電気などそれぞれ異なる専門分野を持つばかりでなく、実務者としてあるいは管理者、更には経営者としての経験を活かし、広範な依頼に応えることができる。さらに、長年の人的ネットワークを活用して、大学や他の専門分野で活躍しているOBを社外スタッフとして支援体制を組めることも大きな特徴である。
 クライアントには、民間企業のほか最近では大学が多くなっており、最先端研究機器の維持管理や活用支援といった業務や、クリーンルームの運転の受託など、大学や研究所の研究支援という事業が着実に広がりつつある。これだけの先端分野に対応できる技術力を持つ会社、さぞや営業も楽かと思いきや、「扱っている分野が先端技術だけに、クライアントにとってシークレットな内容が大部分のため、迂闊に実績を公表できない。だから、私ども企業としては営業活動がやりにくいんです。」と古賀さん。そのため、今のところ営業は口コミに頼っているが、それでも大学からの受託事業は国立・私立合わせて全国7大学に及ぶなど、その評判は着実に全国区で広がってきている。

 

 

知的好奇心旺盛な技術者集団

社員の多くは博士号をもつほどの人材ぞろいである。技術者として積み上げてきた知識と経験に加え、今なお最新の技術論文に目を通し、新たな情報を仕入れている。「専門技術者としては、あたりまえのこと」と古賀さんはさらりと言ってのけるが、知的好奇心旺盛なシニア技術者集団だ。集まれば様々なアイデアが出てくる。そこでプロテックでは「1人3つのアイデアを出そう」を合い言葉に、社員を3グループに分け月に2度アイデア発表会を行っている。技術者は実力の世界なだけに、お互いかなり厳しい意見のやりとりにもなるそうだが、そういう侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を通じて新たなシーズが生まれてくる。
  そうした成果は現在40ほどのアイデアにまとまり、中にはすぐにでもビジネスになりそうなものもあるという。自分でビジネスにしようとする者もいるが、基本的にはパートナー企業を探して事業化を図っていく。顧客からのニーズに対応するだけの受身の姿勢ではなく、自らのシーズを産業界に還元しようという“攻め”の事業展開を繰り広げているのである。

 

仕事の有無は、自分のアイデア次第!!

そういうプロテックの経営スタイルは人材バンク方式である。常勤社員は古賀さんを含め創業メンバーの4人だけ、他は登録社員である。したがって、社員は自分でアイデアを出し仕事を創らないと自分の取り分がない。実力本位の“成功報酬型”なのだ。「黙っていても仕事はない。自分でアイデアを出さないといけない。そういう面ではむしろ、企業の研究所に勤めていたころよりも厳しいくらいです」と笑顔で語る古賀さんだが、“能力第一主義”を貫けるところも技術者集団らしい。
 「3人寄れば文殊の知恵」と言うが、いろいろな分野の人材が集まった方がより多くのアイデアが生まれる。そういう意味からも、古賀さんは、社員をもっと増やすと同時に、様々な企業から集まってもらいたいと考えている。八王子はベッドタウンとして、企業に勤めていた方々が多く住んでいる。そんな立地環境から当初、日立製作所のメンバーで始まったプロテックも、今では関西の大手家電メーカーOBの参加に加え、同業の電機メーカーばかりでなく、鉄鋼業など他業種からのOBが参加するようになってきた。今後ますます斬新なアイデアが生まれてくることだろう。

 

 

地元貢献を目指す、プロテック

また、古賀さんをはじめ社員の皆さんは「自分が住んでいるまちだから」と、地元・八王子に貢献したいという思いを強く持っている。特に、プロテックが持つ技術シーズを、パートナーとなる中小企業とともに育てたいという思いもある。現在パートナーとなる企業は、それぞれの人的ネットワークを活かして全国から探し出しているが、「地元中小企業でもパートナーになれる企業はあるはず」と期待を寄せている。

また、中小企業の中には、共同開発のパートナーが見つからなかったり、技術的な問題をクリアできなかったりしてせっかくのアイデアを眠らせていることもある。そうした企業からの相談を受け付ける相談所を開設したいとも考えている。「幸い、半導体に限らず、材料、金属加工など多くの分野に対応できるので、中小企業のためにぜひ実現したい」と語る古賀さん。目指すは中小企業の技術面での“駆け込み寺”である。

最後に、「どうして、退職してもなお、現役として元気に研究を続けられるのですか?」と尋ねると、「我々は、好奇心を持って物を考えること自体が楽しいと感じていますから。“楽しい”と思えなければ、研究に没頭できないですよ」と古賀さんは語った。“知的好奇心”集団、プロテックは意気軒昂だ。

 
編集後記
今年71歳になる古賀社長の研究にかける思いをお聞きし、シニアパワーに圧倒されてしまった。私も含めて、物質的に満たされた時代に育った世代と違って、戦後何も無いところから這い上がり、高度経済成長を支えてきた世代のパワーと熱意を肌で感じることができた。「知的好奇心」という言葉が随所に出たが、技術者として第一線で活躍して来た極意がその言葉に集約されているように思う。連載第3回で取材した中央電子の高橋社長もおっしゃっていたが、自然現象や機械の動作について、常に「どうしてそうなるんだろう?」という好奇心、探究心を持ちつづけることが、技術者としてのモチベーションを維持する秘訣なのだろう。

古賀社長は、自宅の近くということで、創業の地として八王子を選んでくださった。今後は、研究開発型企業や製造業が集積している八王子の特性を活かし、地元企業と(株)プロッテックとのパートナーシップ 築いていければ、より競争力の高いものづくりが可能となるのではないか、そんな可能性を感じさせる取材であった。

(「取材日を記入」取材日2002年11月21日)