CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第11回 アズマ・ファブリックプリント

実際に見て頂ければ100%成約する自信があります。

取材先 アズマ・ファブリックプリント代表取締役 諸星 亨

所在地 八王子市八幡町11番2号

電話 050-5328-2672

e-mail T.Morohoshi@e-azuma.co.jp

URL www.e-azuma.co.jp/

 「デジタル布プリント」によるタペストリー。本物そのもののリアルな質感が実現されている。

 かつての「織物のまち八王子」を象徴する下恩方繊維工業団地。この一角に「デジタル布プリント」という新しいプリント技術を駆使し、かつての織物業から華麗に業種転換を図ろうとしている会社がある。その名はアズマ・ファブリックプリント。今回は代表の諸星 亨(もろほし とおる)さんにお時間を頂き、「プリントの新境地」についてお話を伺った。

 

 

「ダイレクト・フルカラープリントで多彩に『布』演出!」

「デジタル布プリント」とは、フォトCDやデジタルカメラのデータ、フォトショップやイラストレーター等で作成した写真・デザイン等を、専用のビッグプリンターでパソコンからダイレクトに布へプリントしていく技術のことである。データのありのままを布にプリントできるため、配色や色数、大きさ等の制約にとらわれずプリントしたいデザインを自由に用意できる

例えばハンカチ、スカーフのような小物からポスターやタペストリー(壁掛け)、さらにカーテンやショーウィンドウのディスプレイ、横断幕のような特大物まで、紙では実現できない風合いや耐久性を備えたオリジナル製品を生産することができる。

 実際、アズマ・ファブリックプリントは車のディーラーや美容室の店舗用布地広告、テレビ番組の背景ティスプレイ等、オリジナル物のプリントをよく受注している。タレントの梅宮アンナさんのテレビCM衣装やウェディングドレスのプリントも手がけたことがあるそうだ。
→アズマのショールーム
 

 

織物業からの業種転換と『産・産連携』の賜物

諸星さんは父親の代から織物業に携わっていたが、織物業が苦境を迎えた中、ずっと業種転換を模索していた。そんな時、平成11年に大阪で開催された工業機械の展示会でたまたまコニカ製の布用プリンタに出会い、諸星さんは業種転換へのきっかけを直感したそうだ。

布の一般的なプリント方法には、布地に型を当てて模様を染めつける「捺染」という手法がある。しかし「捺染」は大量規格製品向けであり、型をつくる分単品だとコストが高くつく面もある。一方、布用プリンタは布へ直接プリントするために型は不要なので、ロットの小さい染に向く。諸星さんはこの利を活かすことで「一般的な捺染には向かないプリント分野でニーズをつかむ事ができるのでは・・」と感じたのだ。

 しかしながら、布用プリンタは当時1台1,700万円もかかるシロモノ。そう簡単には購入できない。ところが布用プリンタの開発がコニカの八王子工場で行われており、さらに半年間という条件付であったが、試験機の無償使用の提供を得ることができたのだ。こうした地元の縁とタイミングのお陰で、諸星さんは布用プリンタを使用するきっかけを得たのである。いわば布用プリンタによる「産・産連携」が始まったのだ。

 

 

デジタル布プリント』は「匠」の技術!

最近でこそ市販の高画質カラープリンタが普及し、紙へのプリントは誰でも簡単にできるようになってきた。ところが、布へのプリントは専用プリンタがあれば誰でもできるというものではない。布ゆえに元データと実際の発色には相当な誤差がでる。そのため、イメージどおりの仕上がりにするには、前処理、熱処理、洗浄のそれぞれの過程でかなりの技術が必要なのだ。

データどおりの鮮やかな色と生地本来の風合い実現した「デジタル布プリント」は、それぞれの過程で数え切れないほどの経験を重ね、加えてかつての織物業の経験から生地の特徴を熟知している諸星さんだからこそ成せる「匠の技術」なのだ。

 

地の利を生かす

織物業から布のプリント業に転身した諸星さんだが、織物業時代に築いたネットワークは今でも大事にしている。新しい生地を入手し、その特徴を研究し、そして使いこなすためには、かつての取引先や知り合いの業者の協力が欠かせないそうだ。「生地を扱う者にとって、地元の織物業者は心強い」と諸星さんは言う。

また、諸星さんは多摩美術大や東京造形大等の芸術系大学の学生を積極的に受け入れ、卒業制作の指導にあたっている。「学生に手を貸すかわりに、自分も学生から色々と学ばせてもらっている」と諸星さん。商売柄、若者の斬新で新鮮なデザインや情報は欠かせないようだ。

「織物のまち」や「学園都市」の利を持つ八王子は、アズマ・ファブリックプリントにとって最高の環境と言えるかもしれない。

 

 

新境地の拡大を!

 「デジタル布プリント」に業種転換して3年。最近では池袋の東急ハンズに「デジタル布プリント」の販売コーナーも設けられた。しかし、実際は口コミやインターネットでの販路開拓が主体であり、「どうやって『デジタル布プリント』ができる我が社の存在を知ってもらうか」は今のアズマ・ファブリックプリントの大きな課題だ。そこで、今後は人の多いところで実際にプリントしてみせる店頭販売等を視野に入れ、販路の拡大を狙っている。「サンプルを実際に見て頂ければ、100%成約する自信があります」と諸星さん。自社の製品には絶対的な自信を持つ。

「デジタル布プリント」でプリントの新境地を切り拓くアズマ・ファブリックプリント。これが八王子発祥の新しいビジネスとして羽ばたいて行く日は近い。

 
編集後記
アズマ・ファブリックプリントの社内には自社商品が展示されているショウルームがある。取材にあたり展示品の各種を見せていただいたが、そこには「え・・・・これが布なの!」と思うほど色鮮やかで精巧な製品が並んでいた。

紅葉の風景や車がプリントされた大きな壁掛けやのれんの数々は、質感を伴うリアルな色合いが醸し出される。また、スナップ写真をそのままプリントされた生地で作ったクッションは、孫写真を使えば良いおじいちゃんへのお土産になるのではないだろうか。高感度レンズで撮影した写真でも「写り方そのまま」でプリントされた生地は、我々の身近にある柄模様が中心のプリント生地とは全く次元を異にしており、今までにない布の活用方法を強烈にアピールしているのだ。「デジタル布プリント」をこの域まで極めた諸星さんの努力は、きっと相当なものだったのではないだろうか・・・・。

  この新体験は、やはり実際に見てもらわなければ始まらない。少しでも関心のある人、「本当かな?」と疑っている人は今すぐ下恩方繊維工業団地にあるアズマ・ファブリックプリントへ行くべきである。そこには新しい世界が広がっているのだ。
(取材日2002年7月12日)