CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第98回 番場農園

 「農地をつなぐ」

取材先 番場農園(番場 正敏 代表)

所在地 東京都八王子市下恩方町3217

電 話 042-651-3154

八王子で活躍する農業経営者を多くの方に知っていただくため、Co.Hachiojiでは中西農園、浜中園、番場農園を連続で取材した。今回はその最終回として「番場農園」を紹介する。

「スキマ産業からの脱却を目指し、目玉となる主力商品を生み出したいです」とお話しする番場農園代表の番場正敏氏を伺った。

 

  「独自ルートでの販路開拓」

農業をしていた父の姿を見て、いずれは自分も農家になるであろうと考えていた番場氏。福祉施設勤務を経て、35歳の頃、当時の番場農園代表であった父の元で農業修行をはじめた。それから約4年後、父は他界。以降、番場氏が代表となり経営をされている。

「修行時期が短く、もっと教えてほしいという気持ちがありましたが、今は切り替えて、自身の考えを経営方針として動き回ることができて、やりがいを感じています」。

 先代は、農協には属さず、販売形式は多くの農家とは違う形態で動いていた。現在は自身で、他の農家と重ならない販売先を求めて、カフェや美容院、コンビニエンスストアなど地道に販路を開拓されている。 「地道な販路開拓が実を結び、お陰様で人との繋がりができて、商品を置かせていただけるお店が増えてきました。一般的に流通する時期よりも少し季節を先取りした商品を置かせてもらうなどして差別化を図っています。差別化を図るのは、攻めの戦略というよりは、競争を嫌う自分の性格からです」。

 

「恩方農地の特色を活かす」

穏やかで優しい口調で話される番場氏。独自の販売先を求めつつ、今後の課題は、特徴ある商品作りであるとのこと。

「中西農園さんのダイコン、浜中園さんのパッションフルーツのような主力商品が自身の農園には無いことを痛感しています。品種は多く揃えていますが、生産量が少ないため、強みといえるものがまだありません。今後は品で勝負して大量販売できる体制も構築していきたいと考えています」。

果実に適した土壌として、下恩方農地は様々な果実が収穫できる地域である。番場農園では7月~9月ごろにかけてブルーベリーが多く収穫される。

番場農園のブルーベリーを加工したジャム。

 

 

 「環境変化に柔軟に対応しつつ、下恩方農地の特色を今後も活かしていきたいと考えています。過去には1970~2000年頃はイチゴ、1980~2013年頃にリンゴの栽培も栄えていましたが、それぞれ、土壌の連作障害、地球温暖化等の環境問題によって収穫出来なくなりました。ブルーベリー栽培は10年程前から始めており、ラビットアイ系統の品種を農薬無使用で生産しています。成熟する前の果実がウサギの目のように赤く色づくこの品種は、暖地での栽培がしやすく、当地に適しています」。
ラビットアイ系統は、大粒で甘い味わいが特徴の品種。恩方地域のブルーベリー農園では、より高い基準のものを提供するため、恩方ブルーベリー組合長が独自に編み出した剪定方法によって生産されているとのこと。

「ブルーベリーが一番大きくて甘みがある3年目の枝から生った果実を収穫しています。4年以上伸びた枝から生った果実は栄養が十分に行き届かず、小さな実となってしまいます。そこで3年目を過ぎた枝は伐採し、より旬な果実を収穫できるようにしています。私を含めた組合員は研修を経て、この剪定方法を習得し、他にはない手間暇かけた方法で、美味しいブルーベリーを生産しています」。

「番場農園と八王子農家」

番場農園代表でもあり、JA八王子の青壮年部長でもある番場氏。今後の展望について伺った。

「まだ農業経営者として年数は浅いですが、課題を1つずつクリアしながら、先代から引き継いだ農園をしっかりと守っていきたいです。JA八王子の青壮年部長も仰せつかっており、多く勉強させていただき良い経験となっています。八王子農家の仲間として、共に課題解決について進んでいきたいです」。

 


編集後記

発言のひとつひとつに青壮年部長として八王子農家全体のことを考えている人柄の良さがにじみ出ていた。今後もご自身の農業発展ならびに八王子農業発展に更なるご活躍を期待したい。

(取材日2016年9月14日)