CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第83回 (株)アイ・ラボ CytoSTD研究所

新しい性感染症の総合診査

取材先 (株)アイ・ラボCytoSTD研究所(代表取締役社長 椎名 義雄)

所在地 東京都 八王子市元八王子町1-538-1

電話 042-652-0750

e-mail info_std@ilabo-cyto-std.com

URL http://www.ilabo-cyto-std.com/

代表取締役の椎名社長

   皆さんは「STD」という言葉をご存じだろうか。これは「Sexually Transmitted Disease(性的接触によって感染する病気)」の略であり、いわゆる“性感染症”のことである。
一般に性感染症と言うと、これまでは「性にだらしのない人間がかかるもの」という先入観があった。しかし、時代と共に「性」に対する価値観が変化するにつれ、「性感染症」は若い世代を中心に非常に身近なものになっており、早い段階で正しい知識を身につけることがますます重要になっている。
今回ご紹介する(株)アイ・ラボCytoSTD研究所は、そうした現状に危機感を感じ、独自の性感染症検査キットを開発、「STOP STD」を合言葉に、性感染症撲滅の牽引的役割を果たせる企業を目指して日夜活躍している。第7回多摩グリーン賞(多摩信用金庫主催)も受賞している当社代表取締役、椎名社長に種々お話を伺った。

細胞診検査に捧げる一生

「標本これ人なり、真心を以て接すべし 技術これ美なり、努力を以て磨くべし 診断これ命なり、責任を以て臨むべし」
この言葉は椎名社長の信条であり、会社のモットーでもある。椎名社長は、大学卒業後、臨床検査技師、細胞検査士を経て「医学博士号」を取得、杏林大学において助教授、教授を長年勤め平成14年同大学退職を契機に会社を設立した。「アイ・ラボ」という社名は、社員一人一人が預かった検体は「物」ではなく「人」であり、愛情を以て接するという気持を表現したもの。
 ヘルペス感染細胞やクラミジアといった様々な性病の研究を行い、1998年には国際細胞学会から「細胞検査士賞」を受賞するなど、細胞診断学のエキスパートでもある。
 現在3名の従業員は元杏林大学時代の教え子たちで、彼らも一流の細胞検査士だ。
子宮頸癌と性感染症の検査に特化、専門性をより明確にした新スタイルのラボとして性感染症を予防医学の側からとらえ、インターネットを通した啓蒙活動、婦人科の開業医と連携しながら検診活動を展開する。
自らに与えられた「社会的使命」を自覚し、日々邁進する椎名社長の姿勢には、先の信条に裏打された揺るぎない経営者としての「強さ」を感じる。
 
     自己採取器具
     アイ・ラボPS保存液
 

誰でも使えるSTD検査キット

         国は当面50%の受診率を目指しています 「日本は、子宮頸癌検診の受診率が非常に低いんです」
椎名社長がそう言って見せていただいた表には、全女性のうち検診を受けたことのある人の割合は全体の2割程度、諸外国の3分の1以下という結果が掲載されていた。
「日本は性に関しては非常に閉鎖的で、実際の当事者になるまで自分たちとは無関係、と考えています。また『恥ずかしい』『怖い』といった感情も目立ちます」
確かに「検診を受ける」ために「検診機関」や「産婦人科」に行くことは、大変勇気がいる。ましてや性感染症や子宮頸癌など、性に関するものや婦人科の病気では尚更だ。政府は「子宮頸癌」検診の受診率向上を目的に、無料クーポン券の配布等の政策を実施しているが、その利用状況は決して芳しいものではない。
性病に限らず、「病」は早期発見が望ましいことは言うまでもない。そのためには利用しやすい検診環境がどうしても必要であり、重要である。そこで、椎名社長は考えた。
「もっと日本人女性に合った、やさしい検診方法はないだろうか?」
その発想から生まれたのが自分で採取できる“アイ・ラボSTD検査キット”である。
          STD検査キット。用途に応じて様々なキットがある
使い方は非常に簡単だ。使用者は自分で“細胞”を採取し、それを当社に送付するだけ。検査結果は文書で送ってもらうこともでき、パソコンや携帯電話から確認することもできる。
従来の検診で最も問題となるのは「不適正な標本」である。せっかく検診に行っても、実際に採取される標本のうち、2~3割の標本は適正とは言えない。
しかし「当社のSTD検査キットは、きちんと説明通りに使えば不適正の標本は出ない」と自信を持って説明する。その秘密は当社が開発した「標本作製技術」にある。この方法で作製することで、均一で観察しやすい標本を作り出すことができるのだ。その結果、不適正標本が出る確率は、何と0.1%以下。事実、今まで不適切な標本が出たケースはないそうだ。
「検査の結果も、きちんとした方法で採取を行えば、医師の採取と使用者の採取で違いはありません。秘密保持や費用の面から考えても、検査キットは利用しやすい」
さらに椎名社長は続ける。「普通の検査は子宮頸癌ならそれだけの検査しかしません。しかしアイ・ラボの検査キットを使えば、子宮頸癌と他の性病を同時に検査することができます」
椎名社長が自信を持って進める「STD検査キット」は確かな技術と実績に裏付けられている。
      アイ・ラボの優れた標本作製技術
       医師採取と自己採取の違い

増加する“若年層の性病”

 
 近年問題となっているのは、性病や子宮頸癌の「若年層」への増加である。政府は子宮頸癌検診の対象者を30歳から20歳にまで引き下げ、各自治体は20歳、25歳、30歳、35歳、40歳に無料クーポンを配布し、さらに中学1年生を対象に子宮頸癌予防ワクチンの接種が広がりを見せている。しかし、ワクチンだけでは救えない人を救うためにも検診は欠かせない、と椎名社長は言う。
 子宮頸癌の原因は主にHPVウイルスの感染によって起こる。しかし、このウイルスは一度でも性交した場合感染している可能性があるという。もちろん感染したからと言ってすぐに発現するわけではなく、多くの場合は途中でウイルスが脱落し、子宮頸癌になることは少ない。また実際に癌化する場合も、7年から10年かかる。だが、若年層からの性交渉やパートナー数の増加、性行為の多様化により、従来は40~50代の女性に多かった子宮頸癌が、今では20~30代に増加しているという。
「八王子は学生の街で若者が多い。若い人たちにこそ検診が必要。八王子で先進的な取り組みをすることによって、日本一のモデル地区にしたい。そのためにも地域に根差した啓蒙活動を行い、性教育の意義を唱えていく」
いかに正しい知識を理解してもらうか。椎名社長は高校などの教育機関に積極的に出向き、無料で講演を行っている。
「一人でも多くの人に検診を受けてもらいたい。性感染症から未来の子供たちを守りたい」
そう語る椎名社長の目は、強く輝いている。
       異常な細胞が発見されれば結果に写真が添付されます
  診断これ命なり、責任をもって臨むべし

「検査医療」の未来

   実際の検査を行う場所。様々な器具が並ぶ   『医療分野』が、今後更に大きなマーケットになるのは間違いない。「医療社会」ともいわれる現代において、性感染症の伸び代も大きい。政府が目標とする「子宮頸癌検診受診率50%」という目標にはまだまだ届いておらず、また中、高校生に対しても十分な性教育が行き渡っているとは言い難い。周りの目を気にして、検診に行けない人は現実にはたくさんいる。だからこそ、根気よく草の根的に、「検診の有効性」を多くの人に知ってもらうことが大切である。
「病気」は早期発見ができれば恐ろしいものではない。そのためにも「早めに検診を受ける」という意識付け、検診しやすい仕組みをどう作っていくのかがこれからの鍵だ。
「今後は地方自治体等とも連携し、例えば『成人式』という節目の時に検査キットを配布させてもらうなど、早い段階での周知、啓蒙に力を入れていきたい」と椎名社長。
検査を受ける顧客の目線で「性感染症」や「子宮頸癌」に対する羞恥の敷居を徹底的に下げていく。新スタイルの「予防医学」の推進に向けて、椎名社長の活動は更に広がりを見せる。
         困った時の対策として身近に置いてほしい

 

編集後記

椎名社長は大変気さくな方だ。「性感染症」という馴染みの薄い分野の取材にも関わらず、素人でも分かりやすく、丁寧にご説明いただいた。

日本における検査医療はまだまだ発展途上段階である。八王子発の検査キットが日本中に広がり、“恥ずかしさ”故に悩む多くの人々を病いから救うことができたら・・・そんな幸せな未来を期待せずにはいられない。

(取材日2010年7月26日)